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2011年04月07日

(〜5/8)悲しみには描くしかなかった香月@山口県立美術館


今年は長門市出身の画家、香月泰男の生誕100周年なんですね。今回は、山口県立美術館の「生誕100年 香月泰男 追憶のシベリア」に行ってきました。長門市の香月泰男美術館、や下関市立美術館でも生誕100年の記念の展示がありますね。香月泰男美術館はこちらの記事にもしてますが。また行かねば。

100年前というと明治44年だそうです。ちなみに岡本太郎も同い年だそうな。

で、以下はこんな感じです。
1.「記録」ではなく、「追憶」されたシベリアを見よ
2.香月泰男が黄土色と黒で描き続けたその理由
3.悲しみの画家が愛したのは妻であり家族であった


1.「記録」ではなく、「追憶」されたシベリアを見よ

さてさて、今回の展示の特徴は作品の展示順序にあります。これまでの展示では香月の歴史的な順序で並べる事が多かったそうです。今回はそうではなくて、描かれた順に並べられたものでした。

学芸員さんが言っていましたが、香月のシベリア・シリーズは感動しなくてはいけないものなのか?という問題があります。シベリア抑留という歴史的な悲劇を学ぼうという姿勢でしか見れないものなのか。もっと他の見方はできないのかという疑問があったそうです。

画家の作品としては、描いた順に見る事の方が普通なのに、ついつい歴史資料のように見てしまっていたかもしれませんね。描かれた順で見る事で、また違った視点が生まれてきます。

先に描かれたのは、香月のなかで一番印象に残った部分からと解釈できるかもしれません。逆に、自身の悲しい体験を描くという意味では、まだ描きやすいそんなにつらくはない部分から描いたとも言えるかもしれません。いづれにしろ、記録ではなく「追憶」されたシベリアという視点でシベリア・シリーズを見てみようという新たな意図をもった展示ですね。

全体の展示構成としては、まずシベリア・シリーズ、その後に香月の生い立ちや家族への絵手紙とシベリア抑留のあらましみたいな流れでした。僕としては、香月の半生などを先に見てから、シベリア・シリーズを描いた順で見てみたかったなぁと思いました。でも、それってやっぱり歴史的に見ちゃうことになるのかな(笑)

香月泰男の「シベリア」行路1943-1947
【香月泰男の「シベリア」行路1943-1947。会場で入手。】




2.香月泰男が黄土色と黒で描き続けたその理由

香月泰男というと、シベリア・シリーズにある黄土色と黒を基調にしたイメージのものが多いですね。でも、並べられた初期の作品には意外にも赤や緑なども使って色鮮やかな絵もありました。シベリア・シリーズと呼ばれているものでも初期のものは明るい感じです。

そして、中断を経て再び描き出したときに、あの黒と黄土色の絵が出てくるんですね。シベリアのつらい体験を描くには、この手法でないといけなかっただろうなぁ。

シベリア・シリーズと呼ばれる57点の作品は、帰国した1947年から亡くなる1974年まで描かれました。1949から1955年は中断して、1960年からシリーズとして意識されただしたそうです。それ以降はシリーズとして欠けていた応召や復帰後などの前後の出来事を補うように作品を増やしていきました。

近所の左官を見てシベリアでの強制労働を思い出し。ブルトーザーを見ればキャタピラを、テレビのデモからはデモに参加させられた事を思い出しては作品にしていったそうです。もしかしたら、思い出したくはなかったかもしれないけど、つい日常のなかで頭にうかんできてしまうんだろうなぁ。

忘れそうになるけど、あるいは忘れたい一方で忘れまいとする気持ち。その葛藤のなかで描くしかない。はきだすしかない。描くという事が自分の悲しい過去に向き合う事がだったそうです。

そして、最後の絶筆の作品にある顔は亡くなった人たちの顔だったのかな。コレクション展には抑留された他の画家の作品もありました。でも、シベリア・シリーズほどに一生描き続けたのは香月だけだったそうです。

シベリアを描きながら、私はもう一度シベリアを体験している。
【香月は言った。「シベリアを描きながら、私はもう一度シベリアを体験している。」】




3.悲しみの画家が愛したのは妻であり家族であった

展示会場の中間地点には、ビデオコーナーがありました。香月泰男の妻である婦美子さんが想い出を語ったものです。笑顔がなんとも可愛らしい方です。

香月はハイラルへ出兵中に毎日のように家族にはがきを書いて送っています。もちろん香月が描いた絵つきです。いや、戦地からなんだから絵を描くなんて珍しいのかも。漢字を読めない子供宛にはカタカナでといった優しさもみられます。

また、シベリアから長門に帰って来てからも家族愛は続きます。奥さんの仕事場である台所の壁には色鮮やかな花々を描いたそうですよ。あのシベリア・シリーズの雰囲気とは全く違った少女マンガのような明るさで。

他にも、色々なエピソードがありました。また、yabでは4月2日に特別番組がありましたね。会場の映像はこれが元ネタなのかな。番組ではヨーロッパへのスケッチ遊学に奥さんも同行した様子が当時のフィルムの映像がありました。仲の良さそうな様子が伝わってきますね。4月29日には再放送がありますよ。

また、最近NHKでは朝の7時45分くらいからの山口のニュースで作品紹介がされてますね。

画家が愛した妻の写真
【4月29日には山口朝日放送で特別番組(再放送)がありますよ。】



香月泰男一瞬一生の画業香月泰男/著、香月婦美子/監修
『香月泰男一瞬一生の画業』

シベリア・シリーズをはじめ、香月泰男の生涯と各作品をまとめた入門的一冊。奥さんの監修ってのも◎

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Posted by nettarou at 21:36Comments(0)TrackBack(0)・山口県立美術館